ボストンに来て、今年雪が積もったらバックカントリー・スキーもする予定だ。
スキーだとクライミングでは行かないような、木のない雪の積もった斜面に行くことになるだろう。それに、気候条件が日本と違う。なので雪崩のリスクが高まるばかりか、前にもっていた知識・経験が通用しないかもしれない。そのため、最近は北米の雪崩について勉強し、雪崩に詳しい地元の人と話をしている。
そこで自分のいくつかの短所に気づいた。長くなるので詳しい内容はともかくだが、俺の考えが変わったところのうち、山岳部にとって有益であろうところについてここで少し書きたい。完全なる正論が存在しないので自由にコメントして下さい。
まず傾斜の意識。雪崩が発生する傾斜は一般的に30度から50度位だと知識として知っていたが、知らなかったのは、湿度が低いと50度程度の傾斜ではほとんど雪崩がないに対して、湿度の高い気候では雪が斜面にくっつきやすくなり60度程度でもでかい雪崩が生じる。さてと雪の斜面を登るとき、または上から見るとき、その傾斜は何度なのか言えるかどうか。俺は言えない。雪崩そうな傾斜かどうかは直感的に分かっている(つもり)だが、確かではない。今冬、傾斜計付コンパスを持って練習する予定だ。
弱いポイント。ほとんど雪しかない斜面に、寂しそうな岩が出ていると、その岩の下付近が弱いことが多い(=そこを踏むと雪崩やすい)。常識だけで考えると、岩が雪を抑える支点だと考えていたので、これを知らなかった。しかしこのタイプの弱層の発生現象が複雑で、湿度の高い気候(日本?)では逆の可能性もある。とにかく、リッジライン(まわりより高いところ)なら行ってもいい、下山のルンゼ、北向きの斜面なら避けたほうがいい、と言ったところだろうか。
弱層テスト。前は雪の柱を作って、それを上から叩くテストを参考にしていたが、これは雪崩の発生条件の一つ・雪の強度・しか計らないらしい。しかし強度は、雪崩が発生するのに必要なインパクト(丁寧に歩くとジャンプとの違いを表す尺度)しか意味しない。人が雪を踏んで一ヶ所の弱層を潰しても、雪崩になるためにはその一ヶ所の周りも連鎖的に潰れていかないといけない。このため、別のテスト("Extended Column Test" - ECT)がある:
奥行き30cm、幅90-100cm、深さ120cmのブロック(つまり普通の柱の幅3倍のやつ)を作る。これの片側に、柱テストと同じように上にスコップをおく。そしてそれを叩く。叩いて、雪が潰れた時、弱層沿いにクラックができれば、テストしたポイントが雪崩やすい。
http://www.youtube.com/watch?v=rwXW7NIzlBo
しかし、上記のECTは科学論文が少ない。ECTではなく、以下の少しもっとめんどい"Prototype Propagation Saw Test"がある。こちらのほうが発表されている科学論文(根拠)が多い:
まず四角い柱の強度テストでもっとも危なさそうな弱層を探す。つぎに、奥行き90-100cm、幅30cm、深さは弱層の下まで(つまりECTと同じ大きさだが90度回転)のブロックを作って、弱層を弱層沿いにスノーソーの刃じゃない側で切り始める。ブロックの半分未満で潰れたら、テストしたポイントが雪崩やすい。
http://www.youtube.com/watch?v=9hZEWscONG4
(これのコメンタリーでは、弱層は深いから雪崩が人間によってかなり発生させにくいが、もし発生したら、連鎖反応が強いため大きな雪崩になりやすい)
装備。今まではスキーをやっていたらビーコン必要、クライミング・縦走だけなら不要、と考えていた。そして今も、日本の状況では多くの場合、必要ではないと考える。なぜかというと、雪崩が発生しないルート選択がほとんどできるからだ。または、雪崩る斜面があるルートでも、天気の雪への影響を正しく判断できれば、危険な状態が大体避けられる。そしてヤバそうな時は、リーダーにロープ等紐をつけて、もし流されたらそれを頼りに探す。また、「ビーコンを持っているから大丈夫」と甘く考えて、もっとリスクを犯す可能性もある。にしても、例えば今年の三月の山行の二つ(前穂高と鹿島槍)で、実際に雪崩の危険があったと思ったし、今もそう思う。そしてどちらも、進もうにも戻ろうにも危険があった。こういうとき、選択が強いられると若干のリスクがどうしても出てくる。我々はどちらの賭けも勝ったが、可能性が低いにしても雪崩る場合に備えるのに越したことはない。そこで、必要ではないと書いたが、少なくてもフル装備のときは、200グラムのビーコンはそこまで重くないので持っていくべきかと考える。ビーコンを所有していれば、という話だが。そして2週間に一回以上練習しないとあまり意味がないらしい。ほかの装備ではAvalungという、埋もれた人の息が吸える時間を延長する装置もあるが、登山にはちょっとかさばって重いんじゃないかと思う。でも本当に流されたら命拾いかも。1パーティーに1個、どうしようもない時はトップに着せて、流されたら雪崩の跡を降りてビーコンで探す?
ではでは。雪崩について勉強しましょう。なかなか面白い。
--heiki
2010年11月29日
2010年11月23日
11月19〜21日 アルパインアイス:Lincoln's Throat, Mt. Lincoln, NH
気温が水曜日から下がっていていたので、前週I-93のCannon Mountain近くから見た「白いもの」の偵察に行った。トポは存在しないが、氷ができて、そちらはLincoln's Throatと呼ばれていると少し情報は聞いていた。ネットから見つけた25年前の地形図を頼りに、フル装備で登ってみた。
11月19日
9時半にボストンをたち、途中ビールとベーゲルと酒入用のペットボトルを買って、駐車場で車中泊。
11月20日 曇のち吹雪のち晴
朝6時半起きて、7時15分歩き出す。ハイカーらしき者がもっと早く出発していた。登山道が尾根に登り出すところ、南の尾根にガレをみつけ、上部はガスっているがあれが目的のLincoln's Throatと推定。川まで薮漕ぎで降りて、川を渡って、目的の沢に付く。9時20分。
沢を登りだし、特に難しいところはない。プラブーツでちょっと滑りやすい。1時間半歩いたら、沢が大きく右に曲がって、ちょっと登ったら氷のスラブが出る。アイゼンをつけてノーザイルで登る。70mくらいのスラブで、最上部は氷が薄くて少し考えさせられる。その上に、短い急傾斜のクラックだが問題ない。
吹雪の中でゴーロを登ると次は壁が出る。まっすぐ行きたい氷が全然発達していない。12時15分。ロープを出して左のフェースをドライツーリングで登る。III級程度で、ランナーを必要と感じない。もともと取れないが。途中、アイゼンが外れてちょっとビビる。2P目もロープを出して、きつい薮漕ぎになるのでロープをしまる。最上部は知床なみの薮漕ぎ:雪の付いたクリスマスツリー!幸い、それほど長くない。
14時40分、稜線に出たら、Mt Lincolnの山頂を訪れ、Mt Lafayetteまで快適な稜線を歩き、少し下ったところにテントを張る。16時、日没。2人宴会で、ジャパニーズ・ストアで買ったカレーを食べ、大量の酒を飲む。
11月21日 曇
ゆっくり起きて下山する。ゆっくり帰る。アルパインはやっぱり楽しい。
--heiki
2010年11月17日
11月12〜14日 アルパイン@Mt Washington, NH
1週間前からアイスクライミングを予定していたが、直前の現地情報を見たら暖波で氷がほとんど融けたと予想。
そこでこの周辺の一番高い山、Mount Washingtonの岩場へ偵察に行き、氷があれば氷を登る、なければ岩を登ると決めた。
13日 晴
前夜発でIntervaleへ。面倒くさいから駐車場でテントなしで寝たが、気温がー10度まで落ち、顔が寒かった。朝、車のタイヤがパンクしていて、交換作業で時間ロスを喰らう。まぁ、どうせのんびり気分だったが。
Pinkham NotchからHuntington Ravineまで登って、氷は残骸しかなかったので適当な岩ルートを選んだ:
Cloudwalker II 4 5.7
1P、コーナークラックのベルグラが薄すぎたのでそれ(発達していればニューイングランドグレード4)を避けて、左のIII級程度のフェースからクラックまじりのリッジを登った。ハングの下でビレー(怪しい残置ハーケンをカム、ナッツで補強)。
2P、出だしは左のハングも、右のスラブから垂壁も冬装備だと悪い。ハングを偵察してから、スラブを冷や汗かきながら丁寧に登って、落ちそうになったときピッケルで上のガバをつかんだ。あとは細かいと垂壁も出たがIV-級程度。横クラックでカムでピッチを切る。
3P、フェースを左へトラバースして草付を登る。懸垂地点らしきものを通るが上に抜けると決めていたので、ロープの届くところまでブッシュを強引に引っ張りピッチを切った。
4P、傾斜の落ちたブッシュ帯で、下は雪。80mくらいコンテで登って登攀終了。
登攀具をザックに入れた時は日没が近かった。車まで2時間半くらい歩いて、登山道具屋さんに行ってレストランでステーキを食べてテントで宴会。ニューイングランド流のアルパインは違うな。
14日 晴、風
寝坊して朝10時に起きた。筋肉痛がひどかった。この日は車で一時間離れたクラックのショート・ルートが集まったEcho Cragで登る予定だったが、行ってみたら全部濡れていた。1週間前に凍結していて、この4日間の暖かさで融けたと推定。そこですぐ近くのArtist's Bluffという、豊橋立岩と同じくらいスケールの岩場に行って、適当に遊んだ。風が冷たすぎ!と思ったらボストンに帰った。
山に行けたのは9月以来?!だったので本当によかった。友達から写真をもらったらここにアップします。
--heiki
そこでこの周辺の一番高い山、Mount Washingtonの岩場へ偵察に行き、氷があれば氷を登る、なければ岩を登ると決めた。
13日 晴
前夜発でIntervaleへ。面倒くさいから駐車場でテントなしで寝たが、気温がー10度まで落ち、顔が寒かった。朝、車のタイヤがパンクしていて、交換作業で時間ロスを喰らう。まぁ、どうせのんびり気分だったが。
Pinkham NotchからHuntington Ravineまで登って、氷は残骸しかなかったので適当な岩ルートを選んだ:
Cloudwalker II 4 5.7
1P、コーナークラックのベルグラが薄すぎたのでそれ(発達していればニューイングランドグレード4)を避けて、左のIII級程度のフェースからクラックまじりのリッジを登った。ハングの下でビレー(怪しい残置ハーケンをカム、ナッツで補強)。
2P、出だしは左のハングも、右のスラブから垂壁も冬装備だと悪い。ハングを偵察してから、スラブを冷や汗かきながら丁寧に登って、落ちそうになったときピッケルで上のガバをつかんだ。あとは細かいと垂壁も出たがIV-級程度。横クラックでカムでピッチを切る。
3P、フェースを左へトラバースして草付を登る。懸垂地点らしきものを通るが上に抜けると決めていたので、ロープの届くところまでブッシュを強引に引っ張りピッチを切った。
4P、傾斜の落ちたブッシュ帯で、下は雪。80mくらいコンテで登って登攀終了。
登攀具をザックに入れた時は日没が近かった。車まで2時間半くらい歩いて、登山道具屋さんに行ってレストランでステーキを食べてテントで宴会。ニューイングランド流のアルパインは違うな。
14日 晴、風
寝坊して朝10時に起きた。筋肉痛がひどかった。この日は車で一時間離れたクラックのショート・ルートが集まったEcho Cragで登る予定だったが、行ってみたら全部濡れていた。1週間前に凍結していて、この4日間の暖かさで融けたと推定。そこですぐ近くのArtist's Bluffという、豊橋立岩と同じくらいスケールの岩場に行って、適当に遊んだ。風が冷たすぎ!と思ったらボストンに帰った。
山に行けたのは9月以来?!だったので本当によかった。友達から写真をもらったらここにアップします。
--heiki